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精神疾患は「社員の自己責任」だけではない

 先にまとめ的に書いて置きますね。
 精神疾患になった社員を「弱い奴」「逃げた」と言う人が未だにいます。これは、間違いです。これは「お前って鬱病にはならない典型だよな」と言われ続けて働いていました。だからこそ、こう言う発言を耳にする機会が多かったのでしょう。ただ、自分がうつになってみると「これって自己責任?」と思うのです。
 そして、これを会社の構造で考えると「人事部の所管」となりますし、ストレスチェックや団体保険など法令や福利厚生として制度はキチンとしていると思っている人事部・総務部・経営者の方が多いのでは無いでしょうか?それで充分だと思いますか?
 私は敢えて「それでは不十分だ」と言いたいのです。それが、この投稿の目的ですし、今まで精神疾患と闘っている人や、その周辺の方々に向けた内容を書いていましたが、それでは届かないな。と思ったので、この投稿を書くことにしました。

自己責任論は否定しませんが

 例えば「働き方が悪い」「企業風土に馴染もうとしなかった」など、社員自身が自分で追い込んで行く事もあるでしょう。だから自己責任論を否定はしません。そして会社としては「働き方改革に取り組んでいる」「福利厚生はキチンとしている」「有給消化率を上げるようにしている」など、精一杯やっているアピールが採用ページなどでアピールしていますね。それでも、こんな記事があります。

日本の国民で一生の間にうつ病、不安症など何らかの精神疾患にかかる人の割合は18%と報告されている。これは先進国では少ない方で、3割を超える国も少なくない。また、この中には統合失調症などの精神病性疾患や認知症は含まれていない。従って、大まかかつ控えめに見積もって、「5人に1人は一生の間に何らかの精神疾患にかかる」と考えてよい。

学校保健「第四回 精神保険・精神疾患を学ぶ」(東京大学大学院 教育学研究科健康教育学分野教授 佐々木 司 著)より引用

 これは「教育現場」での精神疾患対策に関する文章からの引用ですが、その序文として書かれている内容で一般社会にも通用すると考えています。5人に1人と言うのは、かなり大きな数字で実感が湧かないかもしれません。が、私が所属していた企業では、ある部門では統計の通り2割程度が精神疾患で通院、休職に追い込まれ、その皺寄せで残った人も順番に倒れていくと言うことがルーティン化していました。私が最後に勤めていた会社、つまりうつを発症した会社でも人事部は明らかにはしませんでしたが、大凡、1割以上が精神疾患を発症しています。また、退職する人の中には本人も会社も気づかない中で精神に傷を負っていたり、発症していたりする人もいるでしょう。となると「自己責任」で済むんでしょうか?

「現場の問題」で片付けるべきではない

 精神疾患を発症する人の多寡は、部署によって違うはずです。これは実際に働いていた感覚です。それに対応するためにストレスチェックが規則になっているのですよね。しかし、このチェックの結果は本人と上司、そして人事部しか知りません。チェックでの傾向やパーセンテージが公開されいてる企業は少ないんじゃないでしょうか?これが第一の問題です。このような「本人とレポートラインが把握して、対応しろ」と言うメッセージが人事部の対応になっていませんか?それで改善できると思っているなら、余りにも無責任と言わざるを得ないのです。この仕組みが判っている人は、ストレスチェックで悪い結果が出ないように記入します。多くは「チェックの結果が悪いと忙しい最中に産業医面談なんて受けていられない」と思っている人も多いでしょう。でも、「上司に迷惑が掛かるかも」とか「上司から更にプレッシャーが掛けられるかも」「評定が悪くなるかも」と悪い忖度をして自分の辛さを隠してチェックしている人もいるのです。これでは意味が無いと言うことです。
 まず、少なくとも職場・部署によって傾向の違いがないか、チェックの結果が悪い人がいる職場ではその職場全体にヒアリングを行う(隠れストレス満載人を探し出す)などの人事部や総務部などが行わないと「メンタルヘルス対策」と言う厚労省の指針に沿わないのではないでしょうか?それをせず「現場の問題」で片付けてしまっては片付くどころか様々な悲劇を生むと思っています。

働き方改革という欺瞞

 敢えて強い言葉を使いますが「働き方改革」と言う名の裏には様々な欺瞞がありませんか?例えば「今日はノー残業デーです」という日にPCを持ち帰って仕事をしている人はいませんか?「お前は管理職だから、残業代は関係ないもんな」と言われて仕事を積まれている人はいませんか?「リモートワークでマイペースで仕事できるよね」と言いながら一日中Zoomや電話に追われて仕事に集中出来る時間は減り、更に会社にいればタバコを吸ったり、ちょっと散歩に出て気分転換できたものが、家でPCの前に座り込んでいないといけない状況にしていませんか?
 これ、働き方改悪になっているんじゃないでしょうか?

現場に偏見があると言えちゃう人事部

 先程の「現場任せ」という点に関わりますが、私が離職する時、人事部の担当者と会話した中で「会社としては精神疾患に偏見はないんですが…現場にはありますね」と言われました。これは今でも引っかかっているのです。
 多分、精神疾患と闘いながら働いている人たちの多くが、また復職しようとしている人たちの多くが、それを恐れているのではないでしょうか?今どき「上手いこと休んだな」なんて悪口を言うような人はいないでしょうが、逆に腫れ物に触るようにされても敵わない、またもっと怖いのは意識しない言葉の力です。これは個々人の意識の問題だと思います。

マネージャー教育を何度も受けた経験から(笑)

 転職を何度もしたことから、その度にマネージャー教育を受けていました。最初に受けた時には生産性や部下の管理などを中心にした内容でした。しかし、そのうち「パワハラ」が大きな題材になるようになりましたね。そんな中で講師が「教育勅語のような対応は駄目!」と何故か言い始めて…これは、駄目だなと思った記憶があります(教育勅語=軍隊教育という先入観でしか話していなかったのです)。そういう教育の時間があるなら「精神疾患」に対する理解を深める教育は出来ないのでしょうか?
 それは精神疾患と闘う人への接し方と同時に、自分が精神疾患になった時にどうすべきか、そして自分が「隠れ精神疾患」になっていないかと言う点で有益だと思うのです。X(旧Twitter)でも、良く見かけるうつの症状である「全身、鉛の鎧を着たようだ」と言うのを実感してもらうように鉛の鎧は無理でも、四肢に重りをつけ、一日仕事をしてみるとか(ちょっと真面目な提案)、「集中できない」と言う体験をするために騒音を社内放送を使い流しながら仕事をしてもらうとか。うつなら簡単な方法で一日体験が全部の症状ではなくても出来たりします。

高離職率は会社のイメージを下げるんです

 先程も書きましたが、精神を患って離職する人だけではなく、その前の段階などで「仕事がきつい」と離職をする人がいるはずです。私が過ごしたのはIT業界です。外資に長くいましたが、その場合、転職は当たり前でキャリアアップの一つの方法でもあります。が、日本のIT屋さんでは、こういった転職は少ないと思っています。「少しでも楽(自分に合った)職場に行きたい」「仕事がキツすぎるので少し休憩したい」と辞める人を何人も見ました。そのため、IT業界は就職や転職をし易い業界になっています。つまり年がら年中「人手不足」なんですね。で、今のように世間一般で人手不足になると、たちまち困窮する構造になっていたりもします。だって労働集約型産業でやっている会社が多いのですから。そうするとフリーランスのエンジニアと契約したり「未経験者歓迎」で人手を補います。
 が、確実にIT業界のイメージって悪くなっていませんか?それは「給料安いよね」「残業多いよね」「派遣みたいな仕事でしょ」と言う事もあるでしょう。が、それ以上に「離職率高くない?」と言う点です。これが単なるイメージではなく、業界としての共通問題になっていませんか?もちろん、パッケージやクラウドサービスを中核にして労働集約型を脱した会社は別でしょうが(かな?)、これでは有為な人材は確保できないですし、もし確保しても転職していく事になるでしょう。
 そして会社が好きで、とか転職は良くないと思って勤め続けている中で精神を病んでしまったり、あるいは転職してきた人には理解できない「固有の風土」ができて、外様と感じながら働かなくてはならない環境にしていませんか?サラリーマン経営者であっても、ネットの評価は気にしましょう。ネットの口コミが悪い会社=ブラック=精神を病みやすい会社・離職率の高い会社になってしまいますよ。して、不満があれば誰でも口コミは書けるんです。そして、そうした口コミサイトを見て転職先を選別する転職・新卒の人たちがいるんです。
 働き方改革なんて声高に言わなくても働きやすい会社なら、精神を病む人も減るでしょうし、離職率も低いのではないでしょうか?
 社員の管理を現場に任せるのではなく、会社として取り組まないといけない時代なんじゃないですか?そして、その事で私も含め精神疾患で苦しむ人が減るでしょうし、そうした人たちが復職・社会復帰しやすくなるんじゃないでしょうか?
 ということで、今回は精神疾患の人向けではなく、とても悪く言いますが「精神疾患製造者」になり得る人たちに向けて書いてみみました。そうならないでくださいね。

 

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