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発症して不安になること
医療機関で「精神疾患です。会社(仕事)は休んでください」と言われると、まず考える不安は「収入は?」ですね。
私もたんまり有給は残っていて、その期間内に寛解すれば問題はないのですが、長引いてくると多くのサラリーマンは
有給休暇 消化→私傷病休暇 消化→休職期間 消化→雇用契約期間満了 退職
となります。
若い間なら再就職への希望もあるでしょうが、私のように50代後半になって発症すると、段々と「復職しても」とか「再就職しても」となって、更に不安に繋がっていきます。それだけに、上手く社会的な扶助を使いながら不安感を軽減していくことが必要になります。
自立支援
自立支援は登録されているクリニック・薬局での治療費・処方薬代の負担を軽減してもらえる制度です。概ね、10%になると思いますから、一般の保健医療よりも更に割安になります。但し、一定の期間の通院が条件になりますから、その期間までは一般の保健での診察費を支払う事になります。
厚労省の説明冒頭を引用すると
1 目的
厚労省「自立支援医療制度の概要」
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
2 対象者
精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者…
となっていて、身体障害だけではなく精神障害の治療費を軽減する制度です。
そして、この申請には区役所で貰える所定の診断書と申請書が必要です。一般に審査は厳しくないようですが、正式な受理までには半年程度かかるかと思います。その為、注意しておきたいのはクリニック選びです。それはこちらでも書いていますが、申請書の本人控えに市区町村の役所で認印を押印された状態で自立支援が使えるかどうかを確認しておきましょう。先程書いたように、押印だけなら申請当日に控えを受領できますから、その直後の通院から適用されることになります。が、正式な証書がないと不可となると半年間は待たなければなりません。この間の診察・処方薬費用も馬鹿にはなりません。だから、クリニック選びの重要な項目になると考えます。
さて申請書には通院しているクリニックの名前を記入する必要があり、これ以外のクリニックでは不適用になってしまいます。申請後に「申請してきました〜」と押印済みの本人控えを提示しても「これでは制度は使えません」では洒落にならないことなので、できるだけ最初にクリニックを選ぶ時にチェックしておいてください。
また、同様に薬局も申請書に記入する必要があります。ですから、最初の通院段階で処方箋をもらって薬局に行ったら、是非、自立支援の事を確認してください。そして「押印だけでは無理です」と言われたら、別の薬局を探すと良いでしょう。
傷病手当
休職に入って無給になるとサラリーマンなら加入している保険組合から「傷病手当」が支給されるようになります。給与の一定割合が支給されるため、本来の給与が賄える訳ではありませんが、それでも生活の支柱になるはずですので必ず貰うようにしましょう。
手続きは、休職前や休職中に必要な書式が会社から送られてくるか、あるいは社会保険組合のサイトから入手可能かと思います。会社から送られてくる場合には数カ月分の予備がついているかも知れませんが、これは、なるべくコピーを取っておきましょう。嫌なことかもしれませんが、治療が長引くと恐らく不足してしまうからです。
その保険組合所定の診断書に医師の記入してもらい、自分が他の必要な書式への記入を行います。私の場合、人事が仲介して申請書などを保険組合に送付してくれたので、これらを会社に送付することで申請作業は終わりです。但し、この間には「郵送」と言うタイムラグが発生するので給与とは違って振込日が請求日(送付日)によってかなりズレる事になります。
また、診断書ですが、これについてはかなり低い金額で記入してもらえるはずなので、それほど負担にはならないと思います。
なお、注意点として「次の通院日は28日だから、今月末日付で診断書を書いてもらって28日にください」とクリニックで頼んでも、コンプライアンス的に断られると思います。必ず過去日付での診断書が出される事には留意しておきましょう。
また、退職後は自分自身で対応する必要があるので、退職日付が月の途中の場合には面倒が起こりやすいようなので注意しましょう。
もう一つは、一定期間で給付は終わりますので、この点にも留意してください。
この制度は私の場合、所属していた会社では人事部が統括していたので、余り手間はありませんでした。が、後述する損害保険の請求では、入金された証明書(交付証明書など、支払われるたびに郵送されてきます)が必要ですし、退職後は自身で対応する必要が出てきます。
もう一つ注意して起きたいのは、退職せざるを得なくなった時に社会保険をどうするか?という事です。私の場合、これを含め面倒な手続きを避けたくて任意継続として前職の社会保険組合に加入していますが、国民保険や他の保険団体に移る場合には、併せて傷病手当がどのような取り扱いになるかを確認しておいた方が良いでしょう。
損害保険(団体)
会社で加入している団体保険で精神疾患を対象としている場合があります。この場合も、傷病手当と同様に保険会社指定の診断書の提示と傷病手当の支給証明が必要になってきます。ただ、この場合の診断書はかなり高額になるので毎月請求するとコストパフォーマンスが悪く感じるかも知れません。また、この保険に特約で精神疾患に対するプラスαがあるケースがあれば、未病の段階でも特約を付けておく事をお勧めします。当然ですが診断を受けて以降に特約は付けられません。(私のように「自分はうつにはならないタイプ」と自他ともに認めていた人間でも発症する事があります。他人事で済まなくならないうちに加入しておくのが保険ですから、もし総務・人事の方がお読みになっていたら、社員に啓発していただきたいと思います)。
障害者手帳
治療期間が長引いてくると障害者手帳の給付対象対象となります。障害者手帳は各都道府県知事名で発行されるので、その効果は都道府県ごとに変わりますし、東京都の場合、特別区内と市町村とでも変わるかと思います。
これも、請求に当たっては都道府県指定の診断書を申請書に合わせて提示する必要がありますし、都道府県の審査が行われるので、請求をしたからと言って必ずしも支給されるものではありません。様々なサイトで審査の通過率などが書かれているので参考にしてみると良いと思います。
なお、東京特別区の場合には、23区内なら東京都交通局が運営しているほぼ全ての公共交通機関(都バス、都営地下鉄、舎人ライナーなど)が無料になります。また私バスでも料金が半額になったりもしますので外出での交通費に不安を抱える事が減りますから、上手く使って自分の精神衛生をリフレッシュするためにも有効です。また電話料金なども割引になりますので、これも詳細が書かれているサイトがありますから、参考にすると良いと思います。
障害年金
ここまで書いてきた補助・扶助の中で一番ハードルが高いのが障害年金かもしれません。ただサラリーマンの場合、厚生年金に加入している方が多数だと思うので審査を通過すれば国民年金の方よりも増額されます。
この場合も、医師の診断書の他、問診票的な申請書など比較的多数の申請書類が必要になります。これが大変だと言う場合には、社会保険労務士に相談すると言う事も可能ですが、できるだけ出費を抑えたいと思う場合には自力で書く事になります。
但し、書き方だけで等級が変わると言う説も聞いたことがあるので、クリニックにソーシャルワーカーがいれば相談してみても良いかもしれません。
この場合も比較的長い審査期間が必要になります。但し、審査に通過する(支給対象者になる)と審査期間中も支給期間として貰えるので初回の支給金額は貯金を下ろしたような感覚になるかもしれませんね。
ただ、先程書いたように私は他の社会扶助に比べてハードルが高い気がしました。書き方が重要、つまり書いている内容が医師の診断書と齟齬があれば問題になるでしょうし、比較的軽症だと思われれば支給対象外と見なされる可能性があるからです。
Googleで調べ、所轄の年金事務所に相談(要予約のところが多いです)して、説明を聞きましょう。そこで貰う書式のうち、自分で書く分の負担が重すぎると思えば、社労士に相談となります。私の場合、世田谷区なので、「ぷらっとホーム世田谷(世田谷区生活困窮者自立相談支援センター)」で相談し、紹介可能とのことでした。このような機関は多くの市区町村にあるかと思うので、探してみてください。ただ私の場合、医師もカウンセラーも「リハビリみたいなものよ」と言うアドバイスもあり、また出来るだけ出費を抑えたいと言う事から自力で書くこととなりました。
さて、書類を提出すると、今度は審査に通らない確率が気になります。下記のサイトで「不支給率」を紹介していました。これを見ると精神障害の場合には不支給率は低い、つまり支給される確率が高いので、少し安心できるかもしれませんね。(と言うか、私はこれを頼りに審査結果の連絡を待っていました)。
「名古屋愛知 障害年金サポート『審査におちることはあるの?』」
失業手当
私の場合、休職期間の満了で契約期間終了として退職となりました。このため、失業手当は自己都合とは異なり、短期の確認期間で長期の支給を受けることが可能になります。但し、失業手当は上記の傷病手当の支給を重複して受けることが出来ません。では?ハローワークの登録を先延ばしにして良いのか?と言えば、そうとは言えない…いずれはしなければなりませんし、傷病手当の支給期限が迫ってからとなると自分の精神状態でパキパキ動けるかというリスクもあります。このため、離職票が元の勤務先から届いたら、すぐに所轄のハローワークに届け出を行い、同時に支給期間の延長をお願いすることができます。
この時に便利なのが障害者手帳です。これがあると、都道府県やハローワークにも依るのかもしれませんが、障害者用の窓口がありますから、状況を説明することも楽です。但し、ハローワークの立場では「勤務が可能であること」が前提になりますから、傷病手当の支給期間が切れていようが勤務可能なくらいには回復している必要があります。
医師やソーシャルワーカーとの相談
私の場合、傷病手当の終わりが見えてきた頃には回復期に入り、医師からもリワークトレーニングを勧められていたこともあり、ハローワークの条件はクリアできるだろうとは考えていました。そこで、支給終了の2ヶ月ぐらい前にソーシャルワーカーと医師とに相談をし、必要な時点で診断書を記述してもらうように準備をしておき、支給終了時点で診断書と必要な書類を提示して失業う手当が出来るだけ滞り無く支給されるようにしています。
これは運が良かったのかもしれませんが、傷病手当の支給期限が見えてきて、かつ失職している場合には医師やソーシャルワーカーに相談することをお勧めします。
この他にも
実際には先程書いた、プラットフォーム世田谷のように生活困窮者として相談することが可能なところではタイミングが合えば、申請可能な助成を教えてもらえます。失職前であっても休職で給与が貰えない状態なら、恥ずかしがらずに相談してみると良いと思います。ただ、助成金などは刻々と変化する性質があるので、どうしてもタイミングが重要になってしまうのは難点ではあります。
しかし、呼吸することだってうつを始めとした精神疾患の患者さんには辛い事なんですから、何かの策が出てくる可能性はありますし、また、その時にはなくても何か新たな助成処置が出てきた時に連絡が貰えるかもしれません。
日本の行政って「お役所仕事」とは言いますが、案外、生きるために必要な事には手厚い部分があると私自身が実感しましたし、こうした助成・扶助を上手く使って病苦と共に襲ってくる経済的な不安を少しでも和らげられるようにと思って、このページを作りました!