私は「ゆっくり」とうつになりました

 人によって「うつ」になるときに「トリガー」が明確にあって、ある日突然、うつになったと言う方もいますが、私の場合、数年かかっているように思います。それまでに起きた外的な要因は様々ですし、分かりにくくなると思うので、少し体調や精神的な変化を振り返っていきたいと思います。

時間感覚に変調が

 私の場合、スケジュール帳要らずで打ち合わせなどの予定を組むことができるくらいの記憶力がありました。そして、同時に、いつの打ち合わせで誰が発言したのかも、一ヶ月・二ヶ月ぐらいなら覚えていたんです。ところが、ある時期から「いつ」というのがハッキリしなくなって来ました。例えば「2週間後に」と言われると、予定表を開いてその日にブッキングがあるかを確認しないとならなくなりましたし、「この前の打ち合わせってさ」と言っていながら、それが先週なのか2日前なのか…不明瞭になってしまったんですね。当時は、色々と時間から逃避したいことがあったので脳が自衛処置を取ったのでしょうが、これは今でも続いています。
 「最初にお会いしたときに」や「以前のお話で」と言う事は覚えているのですが、それが何月何日なのかがハッキリしないんですね。頭の中のカレンダーが崩壊しているような感じです。ただ、誰が何を発言したかや、自分が何を言ったかは覚えている。起きたことは箱の中に地層のように押し込められているんです。が、それがいつなのかが判らなくてスマホのスケジュールに入れていなければ「なんとなく冬」だとか「あれがあった直後だから春先」とかぐらいしか覚えていられないし、年の感覚になると更に崩壊しています。「それって何年前?」と言われると「概ね5年ぐらいですかね」ぐらいしか覚えていないというか、言いようが無いんです。今は、Before コロナとAfter コロナで概ねの年を他人と共有することができますが、それがなければ、今よりもっと不便でしたね。

腸は第二の脳です。皮膚は心の窓です

 このサイトでも、何度か書いていますが、ハードワークと異様なストレスが重なるようになると、腸と皮膚に変調が起きました。まずは便秘です。何をやっても出ない。それが週単位で起きたりするので、ずっとモヤモヤするし、気持ちも荒んできます。
 同時に起きるのが蕁麻疹。友人でもストレスが溜まると手荒れが起きやすくなったりするのがいますが、私の場合、蕁麻疹が起きます。これが何度か繰り返されると、自分の中での「警報」になったりもするのです。が、他人に伝えると「たかが便秘に蕁麻疹?」とハッキリ言われちゃったりします。が、これはかなり自覚症状として解りやすいものなので、自分をケアする上では重要な指標になったりします。
 ストレスは皮膚の免疫力を下げると言いますし、腸も第二の脳と言われる器官ですから、この変調を軽く見ないほうが良い!と私は思っています。

呼吸が熱い

 疲労が溜まると「内臓から疲れる」と表現することがあるんですが…、これって一般的でしょうか?(笑)。私の場合、ハードワークの中で、内臓から疲れてきたなと思うのが「呼吸が熱い」と感じたときです。体温が高くなっている訳ではないんです。多分、呼気を検温しても変化はないでしょう。が、明らかに口の中や喉が熱さを感じ、口に手を当ててみると「熱い気がする」と思う事があります。これも腸や皮膚の変調と同じく、かなり危険な兆候になっていたんだな。と思うようになりました。
 ただ、この内臓から疲れている状態が内科的な検査を受けたからと言って異常値を示すことはありません。だから心から疲れているんでしょうが…、先程も書いたように喉や口が熱いと感じるので自分の中では「内臓から疲れた」と思って表現してみました。

眠れない。眠っても目が覚める

 ハードワークになってくると、どうしても削られるのが睡眠時間です。「明日のプレゼンを仕上げないと」とかで遅くなることもありますが、「打ち合わせの戦略をどうしよう」とか「あそこの作業に遅延がないかな?」と思っていると、ベッドに入る時間は早くても寝付くことができず「どうしよう」「大丈夫かな?」と言う思いが頭の中を駆け巡って寝付けません。色々なサイトを見ているとうつとアルコール中毒の合併症の人を見ることがありますが、気持ちが判らなくありません(それほど酒が強くないのでアル中になれない私ですが)。この思いを抑え込んででも寝ようと思うとアルコールは一番手近な睡眠誘導剤になってくれますからね。
 しかし、私の場合、アルコールは摂らずに寝付こうとするので、ベッドに入ってから1時間、2時間を考え込んで過ごしてしまうことが少なくありませんでした。そして、ようやくウツラウツラしだして夢を見ると、そこで目が覚めるようになりました。ベッドに入ったのが0時、寝付いたのが1時だとして、夢見が悪くて目覚めるのが3時。ここから、また1〜2時間、また考え込んで寝付けなくなります。そして起床が6時。かたちは6時間睡眠ですが、実質3時間程度の睡眠が続きます。これを「俺、ショートスリーパーだから大丈夫」と無理やり言い聞かせ、仕事に向かいます。
 でも、今となってみると私はロングスリーパーだったんですね(笑)。ワークライフバランスなんて事を言いますが、ワークスリープバランスは物凄く大切です。眠る事は大切にしましょう。
それでも眠れなかったら?私の場合、寝ること自体が怖くなってきたことがありました。これはうつの診断を受ける数ヶ月前からだったと思います。つまり、かなり瀬戸際にいると思ったほうが良いでしょう。各種のメンタルチェックや厚労省の窓口に相談する、あるいは心療内科やメンタルクリニックに診断を受けに行った方が良い時期になっていると思います。

集中力ややる気が出てこない

 これは私がうつの診断を受ける1、2か月前から顕著になってきた状態です。普段なら1日あれば出来上がる資料が出来上がらない、PCの画面を見ていても、Excelを立ち上げる気にならない、メールを返信する気にならない。など、普段なら、ちょっと自分に気合を入れれば出来ることが、幾ら気合を入れても出来なくなってきます。それだけなら、まだ良いのかも知れません(と言うのもメールは即レス、資料は爆速で作ってきた自身が有ったので「まぁ、あいつぐらいのゆっくりさでも大丈夫だろ」なんて思いながら、疲れた自分を癒そうとしていたのです。が、酷かったのが集中力の低下です。リモートの会議などでも、全てが他人事のように思えてきている一方で、自分が何かを言いたくても口がパクパクするだけ。みたいな感覚で何も言えません。筋道立てて説明したくても、筋道を作れないのです。資料だって誤字脱字は当たり前になってくるし、品質が物凄く下がっていることを見直ししているとハッキリと分かるのです。終いには「今日一日、何やってたの?」と言われることすらありました。これは、ぐさりぐさりと効きましたね。が、どうにも言い返せない訳です。無意味に謝ることは嫌いな私ですが、筋道立てて説明するのであれば謝ったほうが早いので、とりあえず謝る。これが繰り返されるうちに「あ、こりゃ駄目だ」と思ってクリニックに行くことになったのです。
 そして、もう一つ…。特に急進期に入って顕著になったのが注意力不足です。それまでは、無意識で出来ていたことでも、急進期は特に意識を持っていないとトンデモない事になりかねません。
 財布、バッグにしまった筈なのに無くなっている。バッグの口をキチンと閉じきれていなかったことで落としたんでしょう。横断歩道、信号があるのに気づかずそのまま渡ってクラクションを鳴らされる。忘れ物、それまでも多かったのですが、更に増える。奥さんの話、知らぬ間に聞き流してしまい記憶に残っていない。などなど、記憶障害か何かの障害かと思うくらいに色々と起こります。これをクリニックで相談すると「注意力散漫だよ」と言われてしまいました(笑)。それでも、色々と起きますし、これは回復期に入って良くはなっていますが、完全に元通りになったかと言われると、そんな事はありません。むしろ、無意識での行動を減らしていく必要があるんでしょうね。でも長年の習慣が基礎になっているせいか、中々、難しい問題ではあります。

食の好みの変化

 回復期に入っても継続している事ですが、食の好みに変化が起きるのも兆候かもしれません。私の場合、完全な肉派でしたが、これが小麦粉派へ、刺激物大好きから素材の味重視、揚げ物大好きからあっさりモノ好きへと変化しています。
 小麦粉派と言っても、特にパンとピザに偏っています。毎食がパン、ピザでも構わないくらいです。がピザは殆どマルゲリータで充分、様々な素材が載せられている必要はありません。
 刺激物にしても多様ですが、いわゆる「複雑な味付け」が面倒に感じるのかもしれません。肉食が中心の食生活もすっかり影を潜め、今では肉は必要なし、あれば食べると言う感じですね。大好きだった牛丼も最後に月に1度行けば多い方かも知れないです。そして何につけ唐辛子などを使いたがったのも、すっかり無くなりました。豆腐…冷奴にも醤油は要らず、塩で充分、味付けが濃いものは、急進期にはアウト、今でも決して得意ではないかもしれないですね。
 そして揚げ物。やはり急進期には完全にアウトでした。今でも胸焼けが起きやすくなっています。これは、揚げ油の質の問題もあるかもしれませんが、普段、食べつけないものなので、身体がびっくりしてしまうのかも知れません。
 これらの症状・現象の一つには外食の時に店選びが面倒くさいと思ってしまっていたこと、この事からチェーン店などを主に選ぶようになったことが考えられます。また、急進期に起きていた完全な食欲不振によって食べられそうなものが限られてしまって、偏食が生またのかも知れません。ただ、不思議と嫌いなものが食べられるようになるなんてことはありませんが(笑)。

おまとめ的に

 何度でも言いますが、うつになるキッカケ、もっと言えば適応障害なんかでもそうだと思いますが様々な理由で精神が傷ついてしまうでしょう。そうなると、そのキッカケから発症までの期間も大きな違いがあるはずです。キッカケから早期に発症した人から見れば、私の時系列を見れば「あの時にクリニックに行っておくべきだったのでは?」と思われることも多いでしょうし、自分でも、行くかどうか迷った時期がありました。特に後悔はしないようにしていますが、早期に治療をしていれば、社会復帰ももっと早くできたのではないかと思います。
 また、急進期の間に傷病手当や自立支援制度など様々な公的扶助の申請が発生します。感覚的にはクリニックと役所の往復で忙殺されるようなイメージにすらなります。大変で面倒ではありますが、こういった制度を上手く使う事で経済的な不安が減ってきます。それだけに、自分の為の時間だと思って、少し頑張って見ると良いでしょう。ちなみに、注意力不足の一環で(笑)、必要書類を自宅に忘れて出直した事も何度かあります。ここで自分を責めてはいけません。「これも運動の一つ」と思えれば、回復期に近づく事ができると思います。