もう大丈夫かも!は勘違い

 回復期に入ると、復職を焦る自分がいました。やはり色々な福祉制度を使っていても、収入が減っていますし、それ以上に「退職」の期限が見えてきます。そうなると自然、自分が徐々に良くなっていると言う実感と同時に「早く職場に戻りたい」と言う気持ちが沸き上がってきました。その為、復職に必要な書類を整えてカウンセラーに見せたところで言われたのが「私は正直に言って、まだ早いと思うのよ」とカウンセラーさんにしては珍しくキッパリと言われました。つまり客観的に見れば、まだまだ不安定だし、ここで職場復帰をすれば急進期に逆戻りする可能性すらあるのですね。だから、自己判断で復帰を焦り、会社や医師に復帰を懇願するのは止めたほうが良いと思います。
 多くの会社では、職場復帰には医師の診断が必要になります。その為、必ず医師の判断がキーポイントになります。それを「自分の事は自分が一番わかっている」なんて思い込むのはチョット、痛い患者になってしまいます。いや、急進期の辛さを考えれば医師の判断を重視するのが正解です。もちろん医師が積極的に(あなたの懇願に押し切られる訳ではないと言うことです)復職を勧めるのであれば良いのですが、そうではなければキチンと直してから復職に向かいましょう。

リバウンドが起きやすいかもしれません

 回復期になってくると、時に身体に負荷の掛かる事にも積極的に取り組みたくなってきます。私の場合、神社仏閣巡りが好きなので、ちょっと長い距離を歩いたり(10kmぐらいですかね)したりします。うつ発症前には30kmぐらい歩いた事もありますから、10kmは、その頃の事を考えるとそんなに長い距離ではないんです。が、急進期で体力を激減させた後での10kmは歩きなれていた頃の10kmとは意味が違います。歩いているうちに休憩を取りたくなるし、身体のあちこちに張りを感じる事になります。
 ただ、それでも事前に調べて「あの神社から、こっちのお寺に回っていけばA駅に近いから楽に帰れるな」とか考えていましたから、ちょっと意地になって歩き続けます。そしてA駅に着く頃にはヘトヘト。30kmを歩いた以上に疲れている自分に気づきます。
 そして帰宅。すると疲れ果ててコテンとベッドに横たわる事になります。これで疲労が取れれば良いのです。が、そうは行かないことも…。
 そのまま寝てしまった翌朝、身体の疲労は残っているものの軽減しています。が、気持ちがドローンとしています。自分なりに解釈すると、前日の歩きで自分を追い込んでしまい、自分の気持ちに負担を掛けていたんですね…身体以上に。それが翌日になって身体以上に気持ちの疲れが残ってしまったのです。これ自体は頓服の服用をいつもよりも増やすなどして対処できますが、決してお勧めできる事でも褒められた行動でもないので、自分のペースを知る・守ることがとても重要になってきます。
 そして、徐々に体力も回復してきますから、そうしたら、徐々に歩く距離を増やしたりするのも可能です。焦らず、じっくり鍛え直しましょう。

焦りが禁物な理由

 渡しの場合、行動認知療法も関係して、できるだけ起きたことを前向きに捉えるようにしています。努力…はしているつもりはなく、「あ、やっちまった」と言う事が起きたら「あー、だから俺…駄目なんだよ」とは考えません。そうではなく「まぁ、そんなこともあるさ」と捉え、そして「これで余計に歩けるから良いじゃん」とか「今日はタイミングじゃなかったんだよ」とか、自分に言い聞かせるようにしています。焦りがあると、何かが上手く行かないと「あー、やっぱり駄目か」と言う方向に思考が働くんじゃないでしょうか。そうならないためにも、焦らず、マイペースで進むようにしてあげると自分に優しくできるんじゃないでしょうか。
 自分に優しくと書くと「自分を甘やかすのかよ」と言われそうですが、それでも良いと思います。それまで、追い込んで追い込んで自分で自分を責め続けていたのだから、病気を契機に自分に優しくしても許されるんじゃないですか?
 ある人に聞いた話ですが、怒りやフラストレーションを抱えていると仕事が捗る人がいるそうです。と言うか、私がそのタイプで、怒り・フラストレーションの捌け口のように資料を整え、プレゼンの準備をし、海外とやり取りを行っていたのが私の仕事の仕方でした。「なんで俺だけ、日曜日に仕事してんだよ」「なんでこんな時間になっても寝られないんだよ」と言う怒りがあると、いつもより余計に仕事が進んだりします。これって、非常に危険らしいです。脳内ホルモンがドバーッと出て仕事をしているので、いわゆるワーカーホリックの状況に入ります。自分では「仕事大嫌い」「休みたい」と思っていても、何か頼まれれば「あー、俺がやらないとならんわな」と思ってやってしまうんです。これが、うつへの旅路に赤絨毯を敷き詰めていたようなものなのかも知れません。
 それだけに、病気になって自分の思ったような予定通りに動けないと、焦りもします。が、遅れたら遅れるもんだと思えば良いんじゃないでしょうか。焦って取り戻す必要は、少なくとも療養中には無いはずです。それだけに人との約束はスマホでも手帳でも書き込んで忘れないようにしつつ、自分の中で「今日のやるべきこと」ができなくても「誰にも迷惑かけてないよね」と思えることなら「明日でも良いよね」と流す余裕を持てると、随分、楽になれると思います。
 焦る気持ちはそれでも沸き立ちます。が、それより余裕を持っていること、そして、自分はそれでも自分を信頼しておくことが療養には処方箋も薬局も必要ない薬になるんじゃないかと思います。「〜しちゃいけない」と言われると人間、そっちに意識が向いちゃいます。だから、この見出しのように「焦っちゃ駄目」と自分に言うと、余計に焦りを誘うことになりますね。だから、焦っている自分に気づいたら「すこし、ゆっくりやろう」と自分に言ってみてください。